シンプルモダンな外観とコストの恐ろしい関係①~屋根編
小さい頃にファミコンやラジコンを買ってもらえませんでした。
大人になったので、お小遣いさえ貯めれば自由になんでもできます(^^)
仕事柄旅行も控えていますので、昨日定額給付金でドローンを購入した辻井です。
これで建物を撮影します。
あれ?仕事?(--;)
前回までのシリーズはこちらから
街を歩いていると、時々『お?!』と思う外観の家に遭遇します。
明らかに隣の家とは異質です(笑)
『きっと建築家や設計事務所が携わったんやろーなー』と言った感じの家です。
設計者はみんな(心の中で)これには勝ってるとか、これには恐れ入ったとか色々思うところが有るのですが、私は(価格的に)恐れ入る事は有ったとしても出来れば全部勝ちたいと思ってます(笑)
美しいデザインは細部の積み重ねの上に成り立つのですが、細部に凝るとコストがかさむという側面が有りますので知っているノウハウを全てつぎ込める訳ではありません。ですが、私たち設計者は限られた予算の中でも出来るだけ美しくデザインしたいと思っているのです。
ATTICがどのあたりのデザインを落としどころにしているかを、今回はシンプルなもの・・・というかミニマルな建築にフューチャーして例を挙げてみようと思います。
- 外観上最も特徴的な部分は屋根だと思いますが、ミニマルなデザインは出来るだけシンプルに見せる為に屋根の出っぱり(軒や庇)を嫌い、フラットルーフを好みます。
雨の多い日本で平たい屋根を採用すると、雨漏れとの激しい闘いになりますので、斜めになった勾配屋根が最も多く採用されています。
勾配屋根で、かつ瓦の場合、20年以上のスパンで漆喰などの点検補修程度で済みますが、フラットルーフの場合は10年程度の間隔でやり替えの検討が必要になります。
つまりランニングコスト増えるという事です。
笠木も無くし、出っ張りのない四角さを基調とした外観は、軒庇が無いので、外壁やサッシも雨に濡れやすくなり、漏水のリスクやホコリによる汚染に直接さらされる事になります。
こちらも再塗装などのメンテナンスコストの頻度が倍くらいになってきます。
15年くらい前から、外壁の汚染については親水性の塗装や光触媒の技術で、倍くらいに延命出来るようになってきましたが、イニシャルコストが100万円程度加算されます。
ATTICがフラットルーフにする場合は、防水を複合素材にして、遣り替えや漏水のリスクを軽減するか、殆どを板金の緩い勾配屋根にして、周囲に壁を立ち上げて四角いフラットルーフに見せてフラットルーフっぽく見える様にデザインする事でイニシャルコストとランニングコストに折り合いをつけています。
あるいは、道路側などの正面だけをフラットにして、奥は勾配屋根にする事も有ります。
予算が許せば、正面だけでも内樋にして雨樋(軒樋)を無くすと大分印象が変わります。
大工さんの手間代が少し増えますが、樋の下の高さに合わせて躯体の材料の下をカットする事で軒天と一体のデザインに見せてやり、樋の存在を出来るだけ抑えてやることも出来ます。
屋根の仕上げによる価格は
採色スレート<板金屋根=瓦屋根<フラットルーフ
・・・となります。
一方耐久性は
フラットルーフ<採色スレート<板金屋根≦瓦屋根
・・・となります。
その他、最小勾配に出来るのは
瓦屋根=採色スレート<板金屋根<フラットルーフ
・・・となりますので、ライフサイクルコストとデザインの両側面から設計していくと良いでしょう。
屋根ではありませんが、壁の最上部の笠木と呼ばれるパーツも本当は無い方がきれいです。
私は空を切り取るエッジに萌えますので、自邸でやってみましたが、竣工当時は気持ち良い事この上無いです。
でも数年でえらい事になりました(笑)
壁の上に乗った汚れが全て壁の表面に直で伝いますので、真っ黒な(よだれの様な)汚れが全面につきました。
5年も経過すれば、近所を散歩している知らない老人さんに『あんたの家えらい汚れたな~』と言われる始末でしたから・・・
RCなら壁の中に勾配を取り、排水菅を隠蔽すれば良いのですが、根本的なコストの問題から断念しました。
汚れに耐えて10年間我慢してきましたが、一昨年外壁の塗り替えの際に悩んだ末にとうとう笠木を付けました。
若さゆえの過ちを認めたくなかったのですが、負けました。
ぴえん。
数年経過しましたが、笠木の継ぎ目以外は汚れが殆ど付かなくなりました。
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今回、画像が多い目なのは、ブログの内容を効率的にお伝えする為であって、他のわかりやすいと言われるブログの人気に負けない様に・・・と考えている訳ではありません。 辻井でした。
最近は注文住宅を長岡京市と兵庫で設計しています。
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