追及すると難しくなってくる『照明器具の決め方』のお話。
照明器具を選ぶために少々知識が有った方が良い・・・っぽい部分と、悪いっぽい部分が有る気がします。
知識が増えると、照明器具の決め方・・・と書いている割に、照明器具が選び辛くなるような事をつらつらと書きますので、あまり読まない方が幸せかもしれません、、、
①お部屋の畳数に合わせて照明器具を選べばよいのか。
それでいいと思います。王道です。
照明器具のカタログの・・・
赤丸のところに畳数が書いてあるので、それを参考に決めれば良いです。
・・・はい、冗談はこのくらいにして、ほんとうのお話しをします。
②照明の明るさの単位の話。
昔はワット(W)という単位で全てが表現されていました。
辻井は昭和生まれなので、照明の明るさの単位が『ワット』でしたし、普通の生活のなかでは白熱灯(ふつうの電球です)の明るさを中心軸にして表現することが当たり前でした。
ですが、このワットと言うのは、ほんとは消費電力の事で、一時間あたり、何ワットの消費電力が有るかという意味ですので、明るさの単位ではありません。
時は流れ、LEDの照明器具が出だしたあたりから明るさの表現に訂正が入り、単位が沢山出て来ます。
光束/ルーメン(lm)
光度/カンデラ(cd)
照度/ルクス(lx)
輝度/ニト(nt)
使われ始めたのは、上記の4つの単位なのですが、
・光を出す光源から出る単位時間あたりの光の量をルーメン、
・ある方向への光の強さをカンデラ、
・単位面積あたりの面積に入射する光束の事を照度、
・ある方向から見た単位面積あたりの明るさを輝度
・・・と言います。
よけいに わからんわ(笑)
絵にすると少しわかりやすいので描いてみます。
こうなると、わかる事が有ります。
光源から出る光の束の量(ルーメン)が照明器具が発する明るさなのですが、光の向きで照らされる媒体の明るさ(カンデラ)が変わり、光源からの距離が遠くなると照度(ルクス)が変わる事がわかります。
輝度(ニト)に至っては光源面からある方向への光度を割った値なので、この際忘れましょう。
キラキラした感じとでも覚えておいてください。
さて、光源が発する光束が明るさだとわかった以上、器具のカタログを見るところは『ここ』に変ります。
③照度の設定
さて、ここまで来たら次は明るさ、照度の設定なのですが、いくつかの事を検証する必要が有ります。
床面の照度を確保するには、天井高さの検討が必要です。前述の通り光源からの距離によって明るさが変わると書きましたが、距離の二乗倍減衰していきます。つまり天井高が2倍になれば光束は4倍必要と言う事です。高天井の場合は特に注意が必要になります。
④年齢補正
お住まいになるかたのご年齢を考慮します。
目の水晶体が加齢によって濁るそうです。生まれたときは透明なのですが、80歳くらいでウーロン茶くらいになるそうです。以上の事を踏まえて、40歳以上の場合は、実年齢×10ルクスの照度が必要とされています。
つまり、80歳と40歳では2倍以上の明るさを必要とするという事になります。
複数の年齢のかたがお住まいになる場合は、カタログのここ
・・・に調光機能が有るか。
あるいは別途調光スイッチに対応しているかもチェックし、最初は必要以上に明るく設定しておいて、絞りつつ使用して、加齢に伴って明るく調光する使い方をお勧めしています。
⑤色温度ケルビン(K)の検証
また新しい単位かよ・・・はいそうです。
照明器具には電球に近いオレンジ色の光を出すものから昼間の白い光を出すものが有ります。住宅においては殆どの場合憩うシーンが多いので、オレンジ色の照明色温度でいうと2700ケルビン前後の色をお勧めしていますが、リラックスできる反面、勉強や読書に向いているとは言えません。
そういった場合は、局所的に白い光を出す手元灯(タスクライト)で補います。
さらに前述の②と密接にかかわるのですが、加齢によってオレンジ入るの光は見えにくく暗く感じるようになってきますので、色を変えられる(調色出来る)照明をお勧めする事が有ります。
家で絶対リラックスしたくないかたは、白い真っ白な10000ケルビンくらいの照明にして大丈夫です。
いや、だめかも。
⑥光源の種類
少し前までは電球以外に蛍光灯などの選択肢が有ったのですが、近年はLED光源の照明が殆どを占めています。そのうち有機ELの照明も出てくると思いますが現在のところそんな感じです。
他の光源にくらべてLEDは輝度が高く光束(ルーメン)の割に照度が低く感じます。理由はわかりませんが体感です。
電柱に付いている外灯がLEDに変ってきましたが、見上げるとまぶしい割に、それほど周囲は明るく感じませんし、風景としてあまりにも不快です。輝度だけが高いからでしょうか。
官僚とか偉い人が決めたのだと思いますが、数字だけ見るのではなく実際の様子見て改善してほしいものです。
LEDは経年劣化するにつれ徐々暗くなっていく特性を持っていますので、対策としてワンランク明るい照明を少し絞って使う事をお勧めしています。
⑦インテリアどんな感じ
インテリアの色を考慮します
光は何度も壁や床にバウンドして目に入りますので、床や壁紙の色や艶で、明るさの印象が変わりますが、体感的な明るさの事をさして、明るさ感と表現しています。
照明器具の直下はカタログ通りの照度が取れますが、人間の感じる明るさ感とはあまりリンクしません。
例えば、天井も壁も真っ黒な空間は反射率が悪いので、ショットバーの様な感じになります。
局所はしっかり明るくなりますが、カウンターやグラスだけが照らされる抽象的な空間になり、明るさ感は低くなります。
一般住宅では濃い色のアクセントクロスや、黒や濃い色の床を採用する場合は、注意が必要です。
⑧鏡は反射する
鏡は反射しますが、照明が増える訳ではありません。例えば部屋が二倍に写る大きな鏡をつければ部屋が二倍広く見えますが照明は二倍以上にはなりません。
加えて反射による減衰が有るので、例えば合わせ鏡にすると向こう側に写る部屋は徐々に暗くなります。特に輸入品の鏡は暗いので、顕著です。
つまり、鏡は暗くなると考えて設計するのがセオリーで、『鏡張りで明るくなる!』は嘘ということになります。
不思議ですが大きな鏡の前に立つと暗く感じます。
夜は窓も外部が暗い為、部屋は暗く感じますので、明るい部屋を目指して設置した大きな窓も要注意です。
⑨最後に
ATTICは、大凡こんな感じの事を考えつつ光源を設計してから照明器具を選定していきます。
照明器具メーカーに図面を送って機器の選定を依頼すると、なんと無料でプランボードを作成してくれます。
ですが、仮に上手く情報を伝えられたとしても、作成者のスキルの関係で、①だけを考慮されたプランが出てきますので注意が必要です。
辻井としては、無料は危険だと思っていますので、是非有料プランコースも作って欲しいです。
需要が有ると思うのですが・・・
そういえば最近流行りのソロキャンプで見るロウソクや焚火の色温度は1500~2000ケルビンくらいだそうです。
炎の本来の色温度は、1/fの揺らぎと相まって、LEDで少し色味の調子がくるった人間に、ほんとうの安らぎを思いださせてくれるのではないかと思う 辻井でした。
コダワリの詰まった実例を掲載していますので、ご興味が有れば以下からご覧ください
実例はこちらから。
照明関連のリンクは下記からどうぞ。
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商工会で作ってもらった動画が好評です。弊社、尾崎の自邸で撮影させて頂きました。
Youtubeで辻井が喋っています。ヘラヘラしているのが少し鼻に付きますが、緊張の裏返しですので、お許しください。