シンプルモダンな外観とコストの関係③~構造と開口(窓)編です。
そもそもシンプルモダンってなーに?という事を置き去りにしてお話を進めていると気付いた辻井です。
前回までのシリーズはこちらから
たぶんですが・・・
古典的(ゴシック様式の様)な建築物に対して、アドルフ・ロースさんというオーストリアの建築家が『装飾は罪悪である』と言い出したあたりから、建築全体に影響を与え始めたと私は思ってます。
このロースと言う人は、文化的に未開の地の人が体に装飾(入れ墨)をしているのは文化的に劣っているので仕方ないが、現代人が入れ墨をしている場合、犯罪者か変質者に違いない・・・と言っていた人です。
ロースさんの名誉の為にいうと、オーストラリア人独特の文化(ユーモア)であったのではと思いますし、辻井的には嫌いではないです(笑)
私はシンプルモダン=洗練されていると思っています。
さて、話を戻します。主構造をRC(鉄筋コンクリート)にすると、価格は大幅に上がりますが、開口の大きさや空間の取り方などに制約が無くなり、空間が自由に作れる他、納まりが簡単になり、美しい設計が楽に出来ます。
なにが楽なのかというと、窓廻りや梁、タレカベなどの出っ張りのコントロールです。
特に窓廻りの納まりの違いが出るのはサッシの種類が違うからです。
木造用のサッシは防水の必要性から、外側に出っ張りが有るものが使用されますので、フラットにするのは至難の業です。そもそも形状がこんなに違います。
一方、RC用のサッシは容易にフラットに作れますので、デザイン的にはこんな違いになります。
木造でも同じ様に出来ますが、そもそも形状が異なりますので、余計な部分に手間とコストがかかりますので、殆どの人がしないと思います。
内観も面倒な事をやったら美しく出来ます。
平面で計画して、
詳細図書いて
一手間かけて作ると
スッキリと美しく納まりますので綺麗です。
RC用のサッシは中高層用と呼ばれるもので、ほぼ全て特注寸法を使用しますので、ごく一般的な窓の価格も1.5倍~2倍くらいします。大きさに対する自由度が高いのも特徴です。
例えば枠の無い窓や、高さ4m、巾2mのガラスの自動ドアとかも作れます。
一方、木造用のサッシはサイズと形状を規格品から選択すると安く仕上げられます。
樹脂製の断熱性の高い物などバリエーションも豊富で、性能的に非常に優れている割にコストパフォーマンスは最高なのですが、デザインの事は若干後回しになっている感が有る部分も否めませんでしたが、近年は各メーカーも色々と頑張ってくれいます。
価格度外視で楽な方法や美しい方法をとるのではなく、適材適所が肝心かと思います。
外観も内観も打ち放しの家は格好が良いのですが、本気で住む為の家であれば、少し冷静に考えた方が良いかもしれません。
断熱の無いRCの家に一度でも暮らした事が有るかたならその過酷な環境をご存じかと思いますが、躯体の熱容量が多いので、寒さや暑さを蓄熱し、結露によるカビの発生などにも悩まされます。
エコなんか完全に無視して空調をフル回転させれば良いのですが、光熱費は3倍4倍かかります。ちなみに、家に居ない間も空調は回しし続ける財力が有れば快適に過ごせます。
常に空調を使うホテルとかなら可能ですね。
RCは木造とは異なり、腐らない事から、防水に関しては神経質になるかたは少ない印象です。万一雨漏があっても、すぐに対応すれば、比較的大事には至りませんので、フラットルーフにするなら、良い面が多いと思います。
出っ張りの話です。
木造は構造に木を使うので、どうしても梁状のものが出ますので、デザインに限界が生じます。
RCはコンクリートと鉄筋の複合体なので、鉄筋を増やすなどして、梁の高さをある程度押さえる事が出来ますが、単一素材の木には限界が有ります。
特に広い空間の場合はこんなところに出てしまうと、天井の連続性も阻害し、壁のタイルが一部欠けてしまうので、本来は無い方が良いのですが、構造的に問題が出ては元も子もありませんのであえて出す場合もあります。
実は木造でも無くす方法は有ります。RCではよく使うやりかたで、逆梁という方法です。
逆梁にする本来下にでる梁を上に出す訳ですから、そのぶん全体の高さが上がります。
それでも上げる場合も有りますが。
全体に上げると骨組みの価格が上がり、外壁の面積が増え、全体の高さが上がる事で、構造のバランスが変わったり、法規的な高さの制限に引っかかったり、コストに大きく関わる事も考えられますので、注意が必要です。
・・・とはいえ、
窓やドアなども天井いっぱいの方がすっきりして奇麗です。
ミニマルのキモは『ピンカド・ツライチ・端から全部』ですので、全部開口すると線が減りますので、シンプルになります。
RC住宅の場合はいくらでも背の高いサッシが作れますが、木造用のサッシの制作限界は通常2.3m前後なので、これに合わせて室内の天井高さを設定すると、全体に低い天井の部屋になってしまいます。
ATTICでは、コーブ照明と言われる間接照明を窓側に入れて天井を下げ、下がった天井に対して窓がいっぱいについている様にデザインしています。
あたかも、間接照明の為に下がってきた天井いっぱいに窓が付いている様に見せる事で、仕方なくこうしました感が出ていないはずです。
どうしようもない部分は基礎巾木と呼ばれる部分です。
RCである基礎部分と木造部分が接するとこrは、異種構造なので、明確に分離しないと必ずクラックが入ります。設計者が(ほぼ無意識に)一番に見て、構造を判断します。
逆に言うと、この部分が木造感を強く意識させます。
出来れば地面から建築が生えている様に見せたいので、植栽なんかで隠して見にくくしたり高低差を付けたり、予算が許す限り工夫をしたりしますが、敷地が狭ければストロークが無くなり、広すぎたりすると広範囲に隠すのが難しくなります。
ATTICが巾木を許容している一番の理由は、外壁の中の通気を確保して、家の寿命を延ばす為です。通気工法は価格が高いのですが、トラブルレスな家=ライフサイクルコストを下げる大切なファクターなのです。
事務所は長岡京市の奥海印寺です。
ウッドショックの影響の少ないツーバイフォーで設計しています。
ご相談は無料ですので、お気軽にご連絡ください。
その他、過去の設計実例は、こちらから。