風と光の渓谷Ravine of wind and the light.

設計データData

竣工 2014年 坪数 34坪
場所 京都府京都市 工法 2×4工法
種別 新築 構造 三階建

エピソードEpisode

ホームページをご覧になって、お問い合わせを頂いたお客様の物件です。
久しぶりに京都市内での物件だったのですが、景観法の事も配慮して設計する事になりました。
土地の特徴は、両側を三階建てに挟まれた間口(土地の巾)が狭い約20坪の土地に対する計画です。

土地の特性を考慮すると、ツーバイフォー工法の『建て起こし』と言われる、工法の採用が最良の選択だと思います。

『建て起こし』とは、床に寝かせた状態で外壁を仕上げてから、人力で垂直に壁を起こして固定する工法で、土地の間口いっぱいに建物を建てる事が出来るからです。
木造(在来工法)にも『建て起こし』と言われる工法は有るのですが、工法の関係からツーバイフォーの方が構造上も防水上も頑強に仕上げる事が出来ます。工法のご説明をすると長くなりそうですので、ここでの詳細な説明は割愛させて頂きます。

お客様から最初に頂いたメールは、以下のようなご質問でした。
二台駐車でLDKと夫婦寝室と子供部屋×2を、土地面積67㎡ 建ぺい率60%容積率200%の土地に希望する建物の設計は可能でしょうか?
可能だと判断し、ご連絡を差し上げたところ、具体的な話をお伺いすることになり、プランをさせて頂く運びとなりました。

お客様が、ご要望の趣旨をうまく伝えて下さったので、最初のプランからあまり変わらずに最終形にたどりついています。

  • 敷地を俯瞰から見る敷地を俯瞰から見る
  • 敷地を正面から見る敷地を正面から見る
  • 両面の外壁を仕上げてから壁を建て起こす両面の外壁を仕上げてから壁を建て起こす
  • 最初に提示させて頂いたプランの外観。最初に提示させて頂いたプランの外観。

コンセプトConcept

一階は駐車スペース二台分と大き目のサーフィンの板とウェットスーツなどを収納を出来る収納と、寝室を一室とり、それらにWICを2つ隣接させました。

2つのWICを備えた寝室2つのWICを備えた寝室

二階には広いLDKが欲しいと言うご要望が有ったのですが、人通りの有る通りに面している為、LDKに大きな窓を取ると、通りからの目線 が差してしまう為、プライバシーを確保しつつ採光出来る方法を考える必要があります。そこで、出来るだけ広く感じられる様に、『抜け』を意識して設計する事を考えました。

吹き抜け上部の天窓から差し込む光が壁に左)吹き抜け上部の天窓から差し込む光が壁にバウンドして二階LDKにやわらかく降り注ぐ。
右)天窓を見上げる

まずは、LDKの上部に細長い吹き抜けを(三階の邪魔にならない位置に)取って、さらに天窓を三カ所配置して、自然光が柔らかく差し込むアイディアを思い付きました。縦方向の『抜け』です。

次に、プライバシーの高いバルコニーをLDK床面とフラットに繋がる様に計画する事で、外部と緩やかなつながりを作り、外部に意識が『抜ける』様に計画しています。

バルコニーにはデッキを敷いて、LDKの空間とフラットに繋げる事で、室内の様な外部を創りだす。
バルコニーにはデッキを敷いて、LDKの空間とフラットに繋げる事で、室内の様な外部を創りだす。

もう一点、特筆すべきは、LDKの使い方です。
まず、キッチンの対面カウンターとダイニングテーブルを一体で特注する事で長さを強調しています。そうする事で長さが強調されますので、広がりが出ます。
ハイバックのソファーも特注で制作し、ダイニングチェアに干渉しない絶妙な位置に設置する事にしました。


背板の高さも重要なファクターになりますので、ダイニングチェアも特注で制作しています。
背板の高さも重要なファクターになりますので、ダイニングチェアも特注で制作しています。

ダイニングのスペースとリビングのスペースをオーバーラップさせる事で、見かけの広さと実際の使い勝手を両立させています。
その他、細部の形状や素材感については、いつものごとくこだわって設計させて頂きました。

弊社のプランニングのアプローチ方法は、お客様がどの様な生活をしたいかをまず中心に置きます。次にお好みや、敷地、周辺環境などを立体的捉えてから、各室の配置を順に考えて行きますので、周辺の家とは少し違ってくる場合が多いのかもしれません。

外観や内観のデザインも並行して考えるのですが、特に外観は奇をてらったものではなく、ご要望を昇華した結果があふれ出てくる様にと心がけています。
建築のそれぞれの部分に『機能美』が有り、その集積がデザインに出ればベストだと考えています。

空間や空気感を文章で表わすのは、私にはなかなか難しいです。
でも、少しでも伝わると嬉しいです(笑)
文章は苦手ですが、狭小住宅は得意なATTIC辻井でした。

 

  • 開口補強・断熱補強・耐力壁の設置・美しい壁のバランスが映える外観
  • タイルのなまめかしいテクスチャーとのタイルのなまめかしいテクスチャーとのコントラストが美しい笠木は、本物のウォールナット製。

  • その他、細部の形状や素材感については、いつものごとくこだわって設計させて頂きました。