計画地は比較的広い道路に面した敷地で、特に朝夕は人通りと車の交通量の多い場所でした。
また、電車の線路から平屋の倉庫を挟んで2件目の敷地ですので、特に音とプライバシーに配慮して計画を練ることにしました。
いつもの通り敷地の近所を練り歩き、周辺状況を立体的に頭に叩き込みます。
数日から数週間頭の中に寝かせつつ『う~んう~ん』言っているとイメージがふと降りてくるのですが、今回は夜に走る電車から見た灯篭の様なイメージでした。
吹き抜けの上段の窓は、太陽光と共にどこからも邪魔の入らない眺望を確保していますので、抜群の開放感と四季の移ろいを運んでくれます。
リビングから上段の窓を見上げる。この日の窓は、青空を切り取っていました。
この家で最も長いLDKの西面の長い壁は開口部を必要最低限に抑えています。やがて日が落ちると間接照明が美しいグラデーションを描き始めるので、開口の制限された意味が判明します。
上下に配光された間接照明は、壁全体を少し前方に張り出すことで照明の器具感を排除するとともに、ガラスに映る向こう側の世界を利用して、部屋に2倍の奥行きをもたらしています。
これらは偶然ではなく、上記のスケッチの窓ガラスを見てわかる様に、計画時から入念に設計されています。
LDKに隣接するシンプルモダンな和室。
LDKに隣接した多目的に利用出来る畳敷きのスペースは、デティールに拘り線の数を極力減らしてデザインされています。
収納を宙に浮かせる事や、下部に照明を入れることで、床の間を広く見せていますが、これらの考え方は小さな空間に無限の宇宙を表現しようとした茶室の考え方からインスパイアされた『侘び錆び』の設計。
正直な話、この設計は平面図のプランを見ても、立面図を見ても特段良さのわかり難いプランであると言えます。
しかし、実際にこの敷地に立体が建って、内部の空間と開口の位置などを体感すると、なるほど・・・と思ってもらえる好例だと思います。
設計のポイントは二つです。
お客様のご要望や状況を把握して具現化する事と、敷地やその周辺状況を立体的に掌握して彫刻するようにプランニングし、出来れば抜けのある部分(求心的部分と呼んでいます)をうまく利用する事だと思います。
外観、内観共に何処から見てもシャープな洋風なのですが、何処と無く『和』の気配を感じて頂ける様に意図的に設計しています。きっとDNAの何処かに太古昔の記憶が残っているのでしょうか。
プロであるお客様に、弊社を選んで頂く事は本当に光栄なことです。
なぜなら、どのような姿勢でモノ創りをしているかは、誰よりもプロが熟知しているからです。
いつまでもプロから選ばれる設計でありたいと思う ATTIC辻井でした。